
現地の専門家アドリアナ&マテイが執筆
アドリアナとマテイ・ハロウスコヴィは、人気ブログ Czech the World を運営するトラベルブロガーです。
マテイはプラハ生まれでずっとこの街に住んでおり、アドリアナは10年以上前にここに引っ越してきました。
60か国以上を旅してきましたが、いちばんよく知っている場所を挙げるなら、この街です。
王の道(Královská cesta)はプラハでもっとも名高い道すじのひとつです。歴史地区のまんなかを抜けていくこの道を歩けば、ボヘミア王たちの古い歴史がのぞけます。
何世紀ものあいだ、この儀式の道を戴冠へ向かう次代の君主が歩き、プラハの市民から祝福を受けてきました。
いまではこの道が、歴史的な名所、魔法のような路地、忘れがたい眺めを数珠つなぎにしています。歩けばそのまま、時をさかのぼる旅になります。
王の道とは?
王の道(Královská cesta)は、プラハでもっとも有名な散歩コースです。いまでこそ年に何百万人もの旅行者が歩きますが、もとは中世末期から19世紀にかけて、ボヘミア王の戴冠行列が進む道でした。
この道は、旧市街がもつ世俗の力と、プラハ城がもつ精神的な権威とを象徴的に結んでいます。ゴシック、ルネサンス、バロック、アール・ヌーヴォー——プラハ建築のいいところが、ひと続きの散歩のなかに全部そろっているのです。
ルートと距離
全長はおよそ 2.5キロ で、ゆっくり歩いて 1時間半〜2時間。ただし見どころをきちんと味わい、いくつかは中に入るつもりなら、 3〜4時間 は見ておきましょう。
出発点は共和国広場(Náměstí Republiky)に立つ 火薬塔 、終点はプラハ城の 聖ヴィート大聖堂 です。王の道はプラハ歴史地区の背骨であるだけでなく、街を歩いて知るのにいちばん自然なコースでもあります。主要な記念建造物、広場、展望スポット、そして象徴的な橋を、すべて通っていくからです。
王の道の歴史
この道を通る最初の戴冠行列は 1458年 、イジー・ス・ポジェブラト王のときでした。以後、ルドルフ2世やカール6世といった名高い君主の戴冠を含め、すべての戴冠でこの道が使われるようになります。
最後の戴冠は 1836年 、「善良帝」と呼ばれたオーストリア皇帝フェルディナント5世のときです。ルートそのものは17世紀に定められ、マラー・ストラナを抜けて城まで上がる道すじが固まりました。祝いの行列には音楽と鐘の音、歌声、そして礼砲がつきものでした。王の道はまた、王がギルドや市民、教会の高位聖職者から献上を受ける場でもあり、君主への民の忠誠を目に見える形にしていました。

ルート早見表と地図
| 区間 | おもな見どころ | 距離 |
| 火薬塔 — 旧市街広場 | ツェレトナー通り、黒い聖母の家、カロリヌム | 0.7 km |
| 旧市街広場 — カレル橋 | 天文時計、ティーン教会、クレメンティヌム | 0.8 km |
| カレル橋 — マラー・ストラナ広場 | モステツカー通り、聖ミクラーシュ教会 | 0.5 km |
| マラー・ストラナ広場 — プラハ城 | ネルドヴァ通り、プラハ城、聖ヴィート大聖堂 | 0.5 km |
🕓 全長: 2.5 km
🚶♂️ 所要時間: 1時間半〜2時間(見学しながらなら3〜4時間)
🗺 出発: 火薬塔
🏁 到着: プラハ城(聖ヴィート大聖堂)
第1区間:火薬塔から旧市街の中心へ
旅は旧市街と新市街の境から始まります。石のひとつひとつが歴史を呼吸しているような場所です。
1)火薬塔——王の街への堂々たる門
堂々とした後期ゴシックのこの塔が、旅のスタートラインです。高さ65メートルの火薬塔は1475年、古い門があった場所に建てられました。戴冠行列が正式に旧市街へ迎え入れられたのも、ここでした。「火薬」の名がついたのは17世紀、火薬の貯蔵に使われたからです。いまの姿は19世紀のネオ・ゴシック様式による改修によるものです。
地元からのひとこと: 高さ44メートルの展望回廊まで、ぜひ上ってみてください。186段ありますが、上りきればプラハの息をのむ眺めがごほうびに待っています。

2)市民会館——プラハのアール・ヌーヴォーの真珠
火薬塔のすぐ隣に立つのが、見逃しようのない市民会館です。まばゆいばかりのアール・ヌーヴォー建築で、かつての王宮——歴史上の戴冠行列が本来出発した場所——の跡地に建てられました。20世紀初頭のチェコを代表する芸術家たちの仕事が随所にあり、市長の間はアルフォンス・ミュシャの装飾で飾られています。建物の中心にあるのが、音響のよさで世界に知られるコンサートホール、スメタナ・ホールです。
近くの見どころ: 共和国広場をはさんだ向かいには、百貨店コトヴァが立っています。1970年代のブルータリズム建築の面白い実例で、隣のアール・ヌーヴォーの傑作と鮮やかな対比をつくっています。

3)ツェレトナー通り——建築様式のパレード
共和国広場からツェレトナー通りへ入ります。プラハでもっとも古く、もっとも重要な通りのひとつです。この通りはまさに屋外の建築教科書。建物の土台に残るゴシックから、ルネサンスとバロックのファサード、さらにはキュビスムの稀少な実例まで、ひととおりそろっています。

4)黒い聖母の家——世界にひとつのキュビスムの宝石
ツェレトナー通りの歴史ある建物のあいだに、驚くべき一軒が現れます。黒い聖母の家です。建築家ヨゼフ・ゴチャールの設計で1912年に完成した、チェコ・キュビスム建築の傑作。館内にはチェコ・キュビスム美術館があります。2階には洗練された グランド・カフェ・オリエントがあり、世界で唯一のキュビスム様式のカフェとして知られています。
ツェレトナー通りを進むと、自然と 旧市街広場 に出ます。プラハの歴史の心臓部です。ここで戴冠行列は足を止め、君主は市と大学の要人から忠誠の言葉を受けました。

5)ティーン教会——ゴシックのおとぎ話
高さ80メートルの特徴的な尖塔が2本。ティーン教会は旧市街広場の忘れがたいスカイラインを完成させています。このゴシックの宝石のなかには、プラハ最古のオルガンと、ルドルフ2世の宮廷に仕えたデンマークの天文学者ティコ・ブラーエの墓があります。

6)天文時計のある旧市庁舎——中世の驚異
広場のいちばんの目玉は、なんといっても天文時計(Orloj)を擁する旧市庁舎です。15世紀初頭に組み上げられたこの時計は、中世の科学と技術の傑作。毎正時になると、十二使徒の行列という見ごたえのある仕掛けが動きます。製作者マイスター・ハヌシュにまつわる伝説も有名です。同じ時計をほかで作らせまいと、市の参事会員たちが彼の目をつぶしたと語り継がれています。

7)聖ミクラーシュ教会——バロックの華やぎ
ティーン教会と広場をはさんだ反対側に立つのが聖ミクラーシュ教会です。名高いバロック建築家キリアン・イグナーツ・ディーンツェンホーファーの作品。堂内に入れば、豊かな装飾、大理石の彫像、そして壮大な天井のフレスコ画に圧倒されます。
近くの見どころ: 広場から歩いてすぐのところに、エステート劇場があります。1787年、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』 が初演された場所です。

第2区間:曲がりくねった路地を抜けてカレル橋へ
旧市街広場から、ルネサンス様式の泉がある小広場(Malé náměstí)を抜けて、カルロヴァ通りへ入ります。絵になる曲がりくねった小道が、次の大きな見どころへ導いてくれます。
8)クレメンティヌム——知と美の殿堂
カルロヴァ通りを進むと、かつてのイエズス会の学院だった広大なクレメンティヌムに出ます。ここにはいくつもの宝が隠れています。世界でもっとも美しい図書館のひとつに数えられる バロック図書館、プラハを一望できる 天文塔、そして 鏡の礼拝堂。さらにクレメンティヌムには、チェコで最古の気象観測所があり、1775年から途切れることなく気象が記録され続けています。
カルロヴァ通りを抜けきると、クシジョヴニツケー広場に出ます。プラハでもっとも象徴的な眺めのひとつが待っている場所です。

9)カレル橋——屋外の美術館
目の前に伸びるのが、プラハに現存する最古の橋、カレル橋です。着工は1357年。30体の彫像が並び、まさに屋外の美術館になっています。もっとも有名なのが 聖ヤン・ネポムツキー像。台座のレリーフに触れると幸運が訪れ、またプラハに戻ってこられると言い伝えられています。

10)旧市街橋塔——凱旋門としてのゴシックの門
カレル橋に足を踏み入れるとき、くぐるのが旧市街橋塔です。ヨーロッパでもっとも美しいゴシックの門のひとつとされています。戴冠の道すじでは凱旋門の役目を果たし、彫刻装飾はルクセンブルク家をたたえています。

11)マラー・ストラナ橋塔——小地区への入口
ヴルタヴァ川を渡りきると、高さのちがう2本のマラー・ストラナ橋塔が出迎えます。低いほうのロマネスク様式の塔(ユディト塔)は、かつてのユディト橋の名残です。高いほうの後期ゴシックの塔は15世紀に、対岸の旧市街橋塔にならって建てられました。ここでマラー・ストラナの市長が、市門の鍵を象徴的に王へ手渡しました。

第3区間:プラハ城へ上る
カレル橋を渡りきると、趣あるマラー・ストラナ(Malá Strana)に入ります。歴史ある佇まいをそのまま残している地区です。
12)聖ミクラーシュ教会——プラハ・バロックの頂点
道はマラー・ストラナ広場へ続きます。広場を圧するのが、壮麗な聖ミクラーシュ教会。プラハでもっとも重要なバロックの傑作とされ、ヨーロッパでも屈指の建築です。堂々たるドームと細い鐘楼は、プラハ城のパノラマに欠かせない要素になっています。

13)ネルドヴァ通り——家標(いえじるし)の道
マラー・ストラナ広場からは、ネルドヴァ通りの急な坂を上ります。この通りで有名なのが、絵のような家標です。番地の制度ができる前、家を見分けるために掲げられていました。「二つの太陽の家」を探してみてください。通りの名の由来になった作家ヤン・ネルダが暮らしていた家です。
坂を制すると、フラッチャニ広場に出ます。街全体を見晴らす、見事な眺めが広がります。

14)プラハ城——王たちと大統領の座
プラハ城は宮殿、教会、庭園、官庁からなる広大な複合体です。何世紀にもわたってボヘミアの統治者の座であり、いまはチェコ共和国大統領の公邸でもあります。正面の入口はマティアス門です。

15)聖ヴィート大聖堂——国の精神的な心臓
旅の締めくくりは、チェコという国の精神的な心臓、聖ヴィート大聖堂です。完成までに600年近くを要したこの壮麗なゴシック建築は、ボヘミア王の戴冠が行われた場所であり、 ボヘミア王冠宝器 が納められている場所でもあります。堂内では、アルフォンス・ミュシャが手がけた一枚を含む見事なステンドグラス、聖ヴァーツラフ礼拝堂、そして歴代君主の墓を見ることができます。

王の道から少し外れた寄り道スポット
王の道そのものが歴史あるプラハのいいところを集めた道ですが、そこから数歩それるだけで、多くの旅行者が見落とす隠れた名所があります。少し寄り道する価値は十分。静かな中庭、秘密の展望スポット、芸術の香る一角——プラハを本当に特別にしているのは、そういう場所です。
1)聖ヤクブ教会——ツェレトナー通り脇の隠れた名所
ツェレトナー通りをちょっと入ったところにある、一見なんの変哲もないこの教会は、プラハでも屈指のバロック内装を誇ります。巨大な身廊、美しいフレスコ画、そして大きなオルガンが、記念碑的な空気をつくっています。堂内には奇妙な品もひとつ。祭壇の宝飾品を盗もうとした泥棒の、ミイラ化した前腕です。戒めとして、以来ずっと入口のそばに吊るされています。
実用メモ: たいてい無料で入れますが、おすすめはコンサートのある時間帯。音の響きが素晴らしいです。

2)カフェ・ウ・プリンツェ——旧市街をいちばん美しく見下ろす
天文時計から歩いてすぐのところに、プラハでもっとも有名な屋上テラスをもつカフェがあります。ティーン教会の尖塔と歴史地区の屋根を見渡す眺めは、ただただ見事。プラハが本当に輝く日没どきに、コーヒーか一杯を傾けるのにうってつけです。
実用メモ: 席は前もって予約を(とくに午後)。値段は高めですが、この眺めに代わるものはありません。

3)クシジョヴニツケー広場(十字軍騎士団広場)——カレル橋への入口
カレル橋のたもとにある小さな、それでいて印象的な広場で、ゴシックとバロック、そしてロマン主義の要素が同居しています。中心にあるのはカレル大学を創設したカレル4世の像と、美しいドームをもつ聖フランチェスコ教会。橋に踏み出す前にひと呼吸おく場所として、写真を撮るにも最適です。
実用メモ: 広場の角には、目立たないクレメンティヌムの入口があります。まだ上っていなければ、天文塔に登ってみる価値ありです。

4)カンパ島——カレル橋の下に浮かぶ静けさの島
カレル橋の左手にある階段を下りるだけで、まったく別の世界に出ます。カンパは、チェルトフカという細い流れによってマラー・ストラナから切り離された島で、「プラハのヴェネツィア」と呼ばれています。芝生の公園、現代彫刻、そして信じられないほどの静けさがあります。
実用メモ: フランティシェク・クプカやオットー・グトフロイントの作品を展示するカンパ美術館に立ち寄るのもいいですし、橋を眺めながら川べりを歩くだけでも十分です。

5)ジョン・レノンの壁——自由と愛の象徴
カンパから数十メートルのところに、いまや伝説となったレノンの壁があります。もとはなんの変哲もない壁でしたが、1980年以降、自由な表現の場へと姿を変えました。はじめは共産主義体制への抗議として、いまは平和と寛容と愛へのオマージュとして。書かれる言葉は絶えず入れ替わりますが、この場所の精神は変わりません。
実用メモ: 旅行者の波が押し寄せる前、朝早くに行ってみてください。写真の空気がまるで変わります。

6)ヴァルトシュテイン庭園——孔雀のいるバロックのオアシス
マラー・ストラナ広場から小さな通路を抜けた先に隠れているのが、チェコ上院の議事堂であるヴァルトシュテイン宮殿の庭園です。誰でも自由に入れて、きっちり刈り込まれた生け垣、彫像、噴水に驚かされます。いちばんの人気者は、放し飼いにされている孔雀たちです。
実用メモ: 庭園は春から秋まで開いていて、入場は無料。春はモクレンが咲きそろう、いちばんいい時期です。

7)ヴラシュスカー通りとヤーンスキー・ヴルシェク——ネルドヴァの静かな抜け道
ネルドヴァ通りからは、ヴラシュスカー通りやヤーンスキー・ヴルシェクへ気軽に折れられます。石畳の細い坂道で、旅行者にはほとんど出会いません。この一帯の魅力はかなりのもの。小さなアトリエ、静かなカフェ、そして赤い屋根と城の眺めがあります。
実用メモ: デザインホテル・ゴールデンキーでコーヒーを一杯どうぞ。小さなテラスでは、プラハのまんなかにいながら申し分のない静けさが味わえます。
8)ストラホフ修道院——バロックの図書館と街の眺め
ストラホフ修道院はプラハでもっとも古い修道院のひとつで、ヨーロッパでもっとも美しい図書館のひとつを擁しています。地球儀と古い書物で埋まったバロックの広間は、魔法映画のセットのよう。おまけに、街全体を見晴らす屈指の眺めまで手に入ります。
実用メモ: 図書館を見たあとは、修道院醸造所ストラホフへ。おいしいビールを醸していて、プラハを一望する庭もあります。

9)ノヴィー・スヴェット——城の裏のおとぎ話の小道
プラハ城の裏手に隠れているのが、プラハじゅうでもっともロマンチックな場所のひとつ、ノヴィー・スヴェット(新世界)です。細い路地、色を塗られた家々、石畳、そして完全な静けさ。かつては城で働く人たちの住まいでしたが、いまは詩人と写真家、そして静けさを愛する人のための場所になっています。

実用メモ: 時間が止まったようなノヴィー・スヴェット・カフェでひと休みを。テーブルは数えるほどしかなく、小さくて素敵な庭がついています。
プラハの王の道は、ただの散歩コースではありません。かつてヨーロッパの政治と芸術の中心だった街の、歴史と文化と美しさをたどる旅です。一歩進むごとに、いにしえの王たちにも、いまを生きる大都市の営みにも近づいていきます。王たちの足跡をたどる旅に出て、プラハならではの歴史と美しさに心をあずけてみてください。
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